不倫関係にあった女性に対する包括遺贈は有効か?
本事例は、Aが不倫関係にあった女性Bに対する遺産10分の3の包括遺贈の有効性が争われた事案です。
AとBの不倫関係は7年以上半同棲という形で継続しており
Aと妻CはAとBの不倫関係が始まる前から別居状態でした。
この場合にAのBへの包括遺贈は公序良俗に反するので無効でしょうか?
裁判所の判断は
有効(公序良俗に反しない)
不倫関係にある女性に対する包括遺贈であっても、妻との婚姻関係の実態をある程度失った状態で、いわば、半同棲の形で継続し、AとBの関係が早期の時点でAの家族に公然となっており、不倫関係の維持継続を目的とせず、もっぱらBの生活を保全するためになされたもので、相続人である妻子も遺産を各3分の1を取得し、相続人の生活の基盤が脅かされるとは言えない事情があるときは公序良俗に反しない。とされました。
遺言者夫婦の生活状況、不倫関係にある女性との生活状況、期間、遺贈の額、目的、時期、相続人の生活基盤などの諸事情を総合考慮して出た結論です。
ただし、今回のような包括遺贈の遺言は、不動産等については、実質的に相続人とのあいだで争いが生じる可能性が高いので、不倫関係のあった女性に対しては、特定遺贈の遺言をするなど遺言の執行が容易になるように考慮すべきであったと思います。
例えば、遺言書を2通作成し、
不動産と○○銀行の現預金、証券は、妻と子に2分の1づつとする遺言を1通
△△銀行の預金は、不倫関係にあった女性Bに遺贈、遺言執行者をBとするという遺言を1通作成しておけば、Bは妻子の関与なしに実質的に遺言の執行が可能です。
*遺言執行者の指定をしていない場合は、遺言の執行は相続人である妻子が共同で行うことになるので、かならず遺言執行者を定めておきましょう!
遺言の内容は、遺言を残す方の生活状態によって取るべき方法が様々です。
当事務所では、遺言内容を吟味するだけではなく、自身の死後に遺言執行ができるだけ容易になるように考慮して遺言をのこすように、お客様と一緒に考えさせていただきます。